この記事を読んでいる方には、夜道に一人で歩くのが不安だと感じたり、男性に襲われそうになった経験がある人もいるでしょう。
また、自分の身は自分で守る術を身につけるだけでなく、犯罪に巻き込まれないようにすることも大切です。
筆者は護身術のプロであり、日頃から護身術の普及のため、指導者としての活動を行ってきました。
この記事では筆者の護身術指導者としての経験を活かし、様々なシーン別での護身術やそもそも犯罪被害に巻き込まれないために大切な心構えをお伝えします。
女性が覚えておきたい7種の護身術
基本の護身術1:危険を感じたら両手を前に伸ばす
危険を感じる相手を前にした時、片足を引いて半身にしながら、下の写真のように両手を前に伸ばし相手の行動に備えましょう。これを「パームガード」と呼びます。
パームガードは相手に罪悪感を与え相手が攻撃してくるのを抑止することができます。
相手が殴ってきそうな状況の場合、すぐにパームガードの姿勢をとりましょう。
そうすることで、こちらに攻撃の意思がないことを示すことができ、話し合いによる解決を目指す意思を伝えることが可能です。
基本の護身術2:相手が近づいてきたら両手で相手の顔を押す
両手を前に伸ばした(パームガード)状態でも相手が近づいてきたら、一気に飛び出して伸ばした両手で相手の顔(頭部)を押す。この方法を「ヘッドコントロール」と呼びます。
頭部を押すと、体格に関係なく相手は軸が崩れるのです。
ヘッドコントロールによって襲ってきた相手の軸を崩すことで、隙が生まれます。
その隙に、一目散に逃げることが大切です。
1、パームガードで相手が攻撃してくるのをやめさせる。
2、それでも攻撃してきたら、ヘッドコントロールで相手に隙を作って逃げる
腕を掴まれた時に手を解いて逃げる方法
腕を掴まれた際に、まず、掴まれた自分の手を掴まれていない方の手でつかんでください。
手を回す際は指先から先に回してください。
なぜなら、指先が回った方向に腕は回ることが可能だからです。
相手の手首が外れるくらい自分の掴まれた手を回してください。
手が外れたら、すぐに逃げるようにしましょう。
前から抱きつかれた時に逃げる方法
相手が前から抱きついてきた際は、押し倒されないようにするためにまずはお尻を引きましょう。
お尻を引くことで、互いの前面に足を動かす空間ができ、また押し倒されないように踏ん張ることが可能です。
かかとで相手の足先を踏みつけることで、抱きつきが緩んで体を動かせる空間が広がります。
相手の抱きつきが外れるまで、相手の急所(股間)を足膝で蹴ってください。
急所を蹴られて相手がひるむと抱きつきは外れるので、その隙に逃げましょう。
後ろから抱きつかれた時に逃げる方法
前から抱きつかれた時と同じように、お尻を引いて自分と相手の間に空間を作り、押し倒されないようにしましょう。
さらに相手をひるませて自分の動ける空間を増やすために、相手に頭突きや急所をついたりします。
頭突きなどで抱きついている相手との間の空間が広がったら、振り返って足膝で相手の急所を蹴ってください。
蹴られた相手が怯んでいる隙に逃げましょう。
前からでも、後ろからでも抱きつかれた場合に、すぐに腕を解こうとしても無駄です。
頭突きをしたり、足で急所を蹴って意識をそこへ向かわせることで初めて相手の締め付けは緩みます。
抱きつきを回避するために大切なことは、なんとかして相手の意識を腕から別のところへ持っていくことです。
抱きつかれた際は海老反りにならないようにする
抱きつかれた時、海老反りになって自分の重心が背中側に移ってしまうと押し倒されやすくなってしまいます。
押し倒されてしまうと抵抗が難しく危険なので、できるだけ海老反りにならないようにしましょう。
正面から首を絞められそうになった時に逃げる方法
首を締め付けられら、まずは手を外そうとするそぶりを相手に見せるようにしてください。
そうすることで、相手は自分の首にだけ意識をしてしまい、下半身に隙が生まれるのです。
相手が首にだけ集中しているとわかれば、ガラ空きになった相手の急所を足膝で蹴りましょう。
急所を蹴られた相手は、ひるんで締め付けが緩くなるので、自分で締め付けを解いて逃げることが可能です。
首を絞められた場合、自分も呼吸ができずに全意識が首に行って、自分の手で締め付ける手を解こうとします。
しかし、手を解くために男性と力比べをしても女性は勝てるはずはないのです。
まずは、自分の意識を下半身に持って行き相手の急所を蹴ることを優先しましょう。
バッグを奪われそうな時は抵抗せずに通報する
バッグが奪われそうになった時は、抵抗せずにバックは捨て、相手の顔や特徴を覚えることに全力を注ぎましょう。
バックを奪われそうになった時、無理に引っ張り合いをしても力の強い方が勝ちます。
男性にバックを奪われそうになった場合、女性が抵抗して引っ張ることは避けるべきです。
むやみに抵抗すると、相手は攻撃を仕掛けてくることがあり、自分の身に危険が迫ってしまいます。
大切なことは、抵抗してバックを取り返すことではなく、相手の顔や特徴を覚えて警察にしかるべき対応をしてもらうことです。
馬乗りになられた時は急所を攻撃して逃げる隙を作る
相手が全体重をかけて馬乗りになっている状態は非常に危険な状態です。
体の動かせる場所を使い相手の急所(目、耳、股間)を攻撃して相手から身を守りましょう。
足が動かせる場合、相手の股間を蹴りましょう。
手が使える場合、相手の目を突いたり、耳を引きちぎるくらい掴みましょう。
相手の耳をつかめた場合は、掴んだ耳をどちらかに傾ければ相手の体もそれと一緒に傾くので、馬乗りを回避することが可能です。
馬乗りになられた場合に大切なことは、どうにかして相手にダメージを与えて危険を回避すると言う強い気持ちを持つことです。
護身術は襲ってきた相手を打ち負かすための技ではありません。
相手に技をかけて、自分が逃げるための隙を作り、自分を守るための技です。
女性が護身術を実践する際に知っておきたいポイント
ここまで、護身術の具体的なテクニックをお伝えしてきました。
このような具体的な抵抗する技だけが護身術なのではありません。
犯罪に巻き込まれないようにすることや、平和的解決を行うことも護身術のスキルです。
ここでは、筆者の考える護身術とはどんなものなのか、また女性が身を守るために知っておきたい大切なことについて説明します。
身の回りに争いを呼び込まない「護心」の考えが大切
護身術は身を守る「護身」の考えだけでは成り立っているわけではないのです。
護身術においては、不必要な争いを引き起こす原因となる「執着心」を抑えるための「護心」と言う考えも重要になります。
「護身」の技とは争いの相手から自分の身を守る技のことです。
その一方、「護心」の技とはそもそも争いを起こさない、呼び込まないようにして自分の身を守る技になります。
「護心」とはどういうスキルなのか?
日頃から周りに注意を向けておくことが危険を察知して争いを呼び込まないための方法です。
「安全だろう」と思って歩きスマホやイヤホンをして周りの情報が入ってこないようにしていると、何か危険が迫っていてもそれに気づくことができません。
こういった「安全だろう」と言う思い込みが犯罪者に自分の隙を与えてしまうのです。
そのため、日頃から「安全だろう」と過信するのではなく、周りを確認して危険を察知しようと心がけるようにしましょう。
そして、自分が不審者だと感じた人に近寄られたらはっきりと拒絶を示して、トラブルを未然に防ぐことが大切です。
誰かに「肩をぶつけられた」などと因縁をつけられたり、チンピラに絡まれたりすることもあるでしょう。
そういった場合に、一言「すいません」と謝れば済むこともあります。
しかし、私たちは無意識にでも睨み返してしまったり喧嘩を買ってしまうこともあるのです。
トラブルを回避するためには、自分の感情をコントロールして冷静に対処することを心がけましょう。
感情をコントロールして余計なプライドや傲慢さを捨てれば、自分が悪くないとわかっていてもその場を収めるために頭を下げることができるのです。
護身術を学んで、心を穏やかに保つセルフコントロールができれば、様々なケースでもトラブルを回避することが可能になるのです。
また、そもそもあ相手からの反感を買わないように、日頃から道を譲るなどの思いやりのある行動をしましょう。
こういった、マナーを守るという行為もセルフコントロールを行って、自己中心的な考えを持たないのでできることなのです。
相手が殴ってきそうな状況になっても、自分からは攻撃せずパームガードの姿勢を維持しましょう。
最後の最後まで、攻撃せず平和的解決を目指すことが重要です。
そして、相手が攻撃してきて平和的解決が行えない状況になって初めて、最終手段として護身術の技を使いしょう。
護身術の技は、平和的解決ができず、身に危険が迫っている状況から逃げるための技です。
自分が悪くないとわかっている時でも、頭を下げて護身術の技をできるだけ使わないようにすることを心がけましょう。
護身術の女性に嬉しい効果
自分の身を守るための護身術は、練習すると様々な効果を得ることが可能です。
ここでは、その効果を幾つか紹介します。
護身術を身につけるための3種類の基礎トレーニングの効果
静的トレーニングでは、様々な種類の呼吸法でセルフコントロールすることを学びます。
有名な「瞑想」も呼吸法の1つです。
瞑想では心を穏やかにすることを学ぶことができます。
動的トレーニングでは、主に体幹を鍛えることで体の筋力や骨格、リーチなどを最大限に活かせるようにしていきます。
武器(棒など)での攻撃方法を学びます。
剣トレーニングでは、さらに呼吸を整えて集中力を高めることが可能です。
護身術の訓練はエクササイズにもなる
護身術の訓練では、日常生活では行わない体使いやミットを使った打撃の訓練も行います。
そのため、力んだ心身を緩めて柔軟性をアップさせることが可能です。
また、健康増進やストレス発散、ダイエット効果も期待できます。
精神的に強くなれる
護身術の訓練では、肉体的な強さだけでなく、様々な呼吸法を取り入れ何事にも動じない心を身につけることが可能です。
また、実戦を想定した護身の訓練を行うことで、実際に護身をしなければならない状況でも恐怖心を抑えて危険回避を行うことができます。
ライフスタイルの中に護身術を取り入れてみましょう
この記事を読んで、護身術の意識や考え方を覚えておいてください。
護身術では、自己防衛のための「護身」の力だけではなく、護身術の訓練では無用な争いを回避するための「護心」の力が養われて、犯罪に巻き込まれないスキルが身につきます。
日頃から日本の伝統的な精神や心身の鍛錬を行うことによってストレス発散や自律神経を整えることも可能です。
犯罪に巻き込まれないためだけでなく、生活の質を高めるためにも、日頃から護身術に触れてみることはオススメできます。
また、初めにあげた具体的な護身術は、あくまでも危険にさらされた際に攻撃してくる相手から逃げるための技です。
技を覚えることも大事ですが、日頃からトラブルに巻き込まれないように日頃から意識して対策をしておくことを意識しましょう。