「婚約指輪のリフォームっていくらくらいかかるの?」
「婚約指輪のリフォームは、どうやってお店を選んだらいいの?」
最近では、大切な婚約指輪も流行の変化にあわせて、リフォームする方が増えてきています。
しかし、実際にはどんな仕上がりになるのかわからないと心配したり、値段が高そうだと感じ、リフォームを迷っている人も多いのではないでしょうか。
筆者はジュエリーリフォームのショップを営むプロのデザイナーです。
この記事では、リフォームの実例を出しながら、リフォームを行う際のポイントや、プロから見た婚約指輪のリフォームを行うお店の選び方を説明していきます。
目次
婚約指輪をリフォームするお店の選び方とは?
依頼するお店の特徴を調べる
婚約指輪をリフォーム(リモデル)したいと思った時、どこに依頼しようか迷われると思います。
「ジュエリーリフォーム ○○(地名)」などのキーワードで検索してみると、実際の事例や費用を掲載しているお店も多くあるので、お店選びの参考になるでしょう。
ただし、それらの費用はあくまでも目安で、指輪のデザインや状態で変わることもあります。
正確な金額を知りたい場合は「まずは見積もりを」と、お店にジュエリーを持参してみてください。
見積もりを聞いて、断りたいときも「考えます」と答えれば、問題ありません。
また、リフォームフェアなどイベントに参加すると、特典が適用される場合があります。
気になるお店が見つかったら、尋ねてみるのも良いでしょう。
指輪のリフォームとは、生活スタイルに合わせて自分らしさを表現するものです。
「若い時は華奢でシンプルなデザインがよかったけれど、・・・」
「もっと日常つかえるデザインにしたい。」
「ネックレスにすれば仕事中も着けられるかも」
そんなときは、指輪のリフォーム(リモデル)をすることで希望が叶います。
宝石を残し新しい枠に留める方法、現在の枠を生かして宝石を替える方法、切り離す、削る、分ける、合体させる、組み立てる・・・などなど方法は様々です。
自分用はもちろん、娘・息子のお嫁さんに譲ろう、といったつながりも出てくるでしょう。
高価なものとしての「物理的な価値」だけでなく、身に着ける時間の経過が「精神的な価値」を生み出してくれます。
婚約指輪をリフォームした事例や費用の相場を知りたい
婚約指輪のリフォームを、いくつかのパターンに分けて、事例と共に費用の相場を説明します。
指輪からネックレスにリフォーム:¥20,000〜
ダイヤモンドをより日常的に使いやすくするために、指輪からネックレスに作り変える人はたくさんいます。
ネックレスへのリフォームだと、手持ちのチェーンを利用することができ、小さなペンダントヘッドの加工も比較的安く抑えることが可能です。
石の大きさなどにもよりますが、チェーンを持ち込んだ場合、Pt900のペンダントヘッドの加工代がリフォーム代に相当し、相場は20,000円〜になります。
指輪を普段使いできるデザインにリフォーム:¥100,000〜
写真のように婚約指輪など、デザインが古くなってしまった指輪を普段使いできるように、新しいデザインの指輪にリフォームされる方も多くいらっしゃいます。
そういった指輪のリフォームの場合、石やリングの大きさにもよりますが、Pt900の指輪のリフォーム代の相場は100,000円〜になります。
指輪をもっと華やかにリフォームする場合:¥120,000〜
写真にあるように、持っている指輪をもっと華やかにしたいというリフォームを受けることもあります。
リフォームした後のデザインにもよりますが、ボリュームアップ、ダイヤモンドの追加などで120,000円~が相場です。
婚約指輪をリフォームするのにどれくらい時間がかかりますか?
下の表は、デザイン決定から指輪のリフォームにかかる目安時間を表したものです。
リフォームの種類 | かかる時間 |
空枠利用 | 1〜2週間 |
空枠利用+アレンジ | 約1ヶ月 |
オリジナルデザイン | 1〜2ヶ月 |
指輪のリフォームには、既存の空枠を利用するリフォームとオリジナルデザインを作る、2種類の方法があり、かかる時間も違います。
空枠を利用するリフォームとは、店頭にあるサンプルやカタログからお持ちの石に会う寸法の枠を選んでその枠のデザインにリフォームする方法です。
この場合、費用は簡単に出せるようにシステム化されていて、依頼主も気軽にリフォーム相談しやすくなっています。
空枠を用いたリフォームの場合かかる時間は、デザイン決定後2〜3週間です。
また、空枠を少しだけ自分好みにアレンジすることができるお店もあります。
空枠をアレンジした場合場合リフォームにはもう少し時間がかかり、制作にかかる時間はデザイン決定後約1ヶ月です。
ジュエリーリフォーム(リモデル)では、主にデザイナーが依頼主のご希望を伺ってデザインを提案します。
筆者の専門とする分野です。
店頭や、ホームページからのご相談メールで依頼を受け、デザイン画を描いてご提案します。
遠方の場合でも、すべてメールでやり取りをすることが可能です。
オリジナルデザインの場合は原型からの制作となり、どうしても時間が必要になるため、デザイン決定から1~2か月かかります。
婚約指輪のリフォームについての疑問をプロが解説!
ここでは、よく聞かれる指輪のリフォームに関する様々な疑問にお答えします。
基本的にお客様からお預かりした、指輪の地金そのものをリフォーム制作に用いることはしません。
なぜなら、それまで預かった地金がどのように加工されてきたかがわからないため、リフォーム加工でその地金の品位を保つことできない可能性があるからです。
例えば、指輪のサイズ直しをしたりする際に用いるロウという溶接材が金属の品位を下げてしまうこともあり、お預かりした地金が表示されている品位に届いていないこともあります。
プラチナを例にあげると、純プラチナはPt1000、95%プラチナはPt950として表します。
こういった理由から、ジュエリーリフォームではお預かりした地金に相当する品位の新しい金属を用いるのが基本です。
しかし、リフォームの制作方法によっては例外もありますので、もともとの地金を使うことを希望される方は、打ち合わせの際に相談してみてください。
古いリングのデザインをリフォームに取り入れることは可能です。
新しいデザインにしたいものの、古いリングの印象的なデザインはそのままにして、ずっと身につけていたいと考える方も多いでしょう。
そういった場合は、古いデザインの良いところを活かし、パーツとして利用します。
2つに分ける方法にもよりますが可能です。
婚約指輪にメレダイヤがいくつか用いられている場合は、メレダイヤを分けることはできます。
また、婚約指輪を石と金属に分けてそれぞれでリフォームして、2つのジュエリーにすることも可能です。
デザイン上、指輪を切ったり繋げたりできるならば、写真のような方法で加工します。
この場合、高さがある菊爪(菊の花をモチーフにした爪留め)の下の部分にカットすることができる余裕がありました。
そのため、菊爪の部分を切り離し、下の余裕のある部分をカットして高さを低くして、再び溶接を行うことができたのです。
この加工はお受けできないお店もあります。
2つの指輪をまとめることは可能です
指輪を拝見した後に、お客様の雰囲気やイメージを考えて、デザインをご提案します。
金やダイヤモンドを追加することは可能です。
プラチナと金の組み合わせは、指輪にカジュアルな感じを与えてくれます。
また、メレダイヤのような小さなダイヤモンドを追加すれば指輪をさらに華やかにすることが可能です。
リフォームをする前に確認すべき注意点は?
お店がジュエリーを預る際には、宝石が天然石かそれ以外のものかを確認します。
購入先の保証書(あるいは鑑定書)があれば持参して見てもらいましょう。
このチェックは、依頼主にとってもお店にとっても非常に重要な意味を持ちます。
例えば、リフォームする指輪が頂き物で、依頼主が「あの方がくださった指輪だから、石はダイヤモンドに違いない」と思い込んでいた石があるとします。
しかし、お店が改めて確認したところ、実は合成石だったことがわかりました。
お店側は「お客様がダイヤモンドだと言われた石について、がっかりさせてはいけない」と事実を伝えずにリフォームを受けてしまうとどうなるでしょうか?
リフォームが完了した後、お客様が第三者に「この石は合成ではないか?」と指摘された場合、依頼主はお店に「石を取り替えたのでは?」と疑うかもしれません。
また「合成だと初めからわかっていれば、高額な費用をかけてリフォームしなかったのに」と主張するかもしれませんね。
リフォーム前に、これからリフォームするジュエリーが天然石かどうかをきちんと確認していなければ、トラブルの元になってしまうのです。
もちろん合成石でも思い出の石であれば、リフォームして身に着けたいと思うでしょう。
それは物理的価値よりも精神的な価値を重んじた場合であり、お客様の価値観次第です。
また、店頭では宝石名についてのトラブルについて避けるために、お客様の申告宝石名で呼ぶことはするものの、見た目の色、形で預かり品を表記します。
ダイヤモンドは「無色透明石」、パール「白色球形石」と表記するような形です。
特に色石の場合は見た目ではわからないものも多いため、石名を確定しません。
石が何かわからない、知りたいという場合は、第三者鑑別機関に出して、鑑別することが可能です。(有料で科学的検査を行います。)
また、鑑定士のいるお店で機材があれば見てもらえるかもしれません。概ね石は枠から外しますので、お客様の了承の上で行います。
貴金属は刻印を打つことが通例ですが、時々嘘があります。
指輪に刻印がなかったり、刻印があっても偽りの刻印の場合があるのです。
買い取り、下取りをする際には、金属品位を確認してから行われます。(この場合、古物商営業許可が必要)
どんな流れで、婚約指輪のリフォームが完了するの?
一般的なリフォーム完了までの流れ
実際に、お客様が初めて来店されてから、リフォーム完了までの流れを解説していきます。
まずは「婚約指輪のリフォームを検討している」とお店に伝えて、持参した指輪を見てもらいましょう。
その際に、宝石がダイヤモンドの場合だと鑑定書を持参しておけば、お店も石の確認が可能です。
リフォームしようと思った理由や、今のデザインの気に入らないところ、どのようにリフォームしたいかなどをお店に伝えると良いでしょう。
また、実際のサンプルを見ながら、デザインを絞り込んでいくことも可能です。
デザイナーと相談を重ねて、デザインが決定すると、費用のお見積もりができます。
どんなお店でも、費用の見積もりまでは無料です。
お見積もりで納得をされたお客様は、制作依頼をして先に支払いまでを行います。
支払いが完了すれば、制作に取り掛かります。
納期は遅くなってしまいますが、制作途中でのチェックも可能です。
出来上がってチェック項目に従って検品した後、お客様にお渡しします。
実際の作業工程の流れをちょっとだけお見せします!
ジュエリーリフォームでは、どのような工程で作業を行っているか気になる方も多いでしょう。
筆者は、リフォームに限らずジュエリー制作も同じ方法で行うので、ホワイトゴールドのペアリングを制作する工程を写真とともに説明します。
デザインが決定してから、筆者がロウでできたWAXという原型を削ってリングの形を作ります。
最近では、3DCADと呼ばれるコンピューターツールを用いて、コンピュータ上でリングの形作りを行うことも可能です。
筆者は、この形作りだけ制作に関わります。
完成した原型を石膏で固め、熱で中のロウでできた原型を溶かし出します。
こうすることで、石膏の中に原型の形の空洞ができ、その中に溶かした金属を流し込んでいくのです。
この作業が鋳造という工程で、専門の機械と技術が必要なので筆者は業者に依頼しています。
鋳造後のホワイトゴールドは写真のような色をしています。
磨いてから石留めを行いますが、その石留めにも、熟練の技術が必要です。
石留めまで終われば、リングに刻印を入れて、ロジウムメッキでホワイトゴールドに仕上げのコーティングをして完成です。
コーティングによって写真のように、リングも白く輝くようになります。
このように、様々な技術者の手がかかってリフォームされたジュエリーは一生の宝物になること間違いなしです。
筆者のお店「atelier Cham」はどんなお店?
筆者のお店「atelier Cham」について紹介します。
「atelier Cham」は、インターネットショップです。
ご相談はメールを中心に、最近はLINEも使っています。文章だけでなく、画像サンプルを見ていただくことが可能です。
仕事が忙しく、お店に行く時間がない方、近くにお店がない方にご利用いただいております。
お近くならば、スケジュールを合わせて実際にお会いすることも可能です。
リフォーム(リモデル)を行うお店は、お客様に安心して完成を待ってもらうために信用が大切です。
専門的な知識はもちろん、熟練の職人とのやり取り、その後のケアも必須条件だと思います。
打ち合わせは、できるだけお客様に完成を想像していただけるように心がけています。
まずは3パターン、それから発展したパターン。徐々にご希望に近くなるようにデザインをまとめてゆきます。
また、石の管理も大切なことです。
加工前のチェック、傷の有無、石の弱点をカバーできるようなデザインもご提案いたします。
婚約指輪のリフォームは心を次世代に繋ぐもの
婚約指輪は渡す人と受け取る人の心を繋ぐものだと考えています。
そして、婚約指輪に用いられるダイヤモンドの永久の輝きは、2人の永久の繋がりの象徴になります。
繋がりの象徴になった、ダイヤモンドはジュエリーリフォームという形で、代々引き継ぐことができるのです。
ダイヤモンドを受け継いだ子孫は、そのダイヤモンドからあなたとの繋がりを感じることができます。
そういった意味で、ジュエリーリフォームは2人の想いを、未来に遺すための大切な営みなのです。