デフリンピックはオリンピックやパラリンピックと同じように4年に1度開かれるデフスポーツ(聴覚障害者スポーツ)の祭典です。
筆者は、トレーナーとしてデフスポーツに関わった8年間で2度のデフリンピックを含む、6度の国際大会に帯同しました。
この記事では、デフリンピックやデフスポーツについて紹介していきます。
目次
デフリンピックとパラリンピックの2つの違い
みなさんの多くは、パラリンピックは障害者のためのオリンピックだと思っていることでしょう。
しかし、パラリンピックには聴覚障害の競技が含まれていません。
聴覚障害者にはオリンピックとは別にデフリンピックというスポーツの祭典があるのです。
ちなみに、デフリンピック(Deaflympics)とはろう者を表す英語の(Deaf)とオリンピック(Olympic)を合わせた言葉になります。
障害者スポーツの祭典として広く知られるパラリンピックと聴覚障害者スポーツの祭典であるデフリンピックの間にはどのような違いがあるのでしょうか?
デフリンピックはろう者同士がスポーツの記録を競い合う競技性を重視し、ろう者スポーツ団体の活動の発展を目指してこれまで行われてきました。
一方、パラリンピックの始まりは第二次世界大戦の兵士の治療や社会復帰のために医師が病院内でスポーツを用いて行ったリハビリを目的とする競技会です。
このように、デフリンピックとパラリンピックでは開催された経緯が異なっています。
しかし、近年ではパラリンピックも競技性が高まってきており、どちらの大会もいい記録を出すことに重きを置かれるようになってきているのです。
オリンピックとパラリンピックは同じ年に同じ都市で開催されていますが、デフリンピックはオリンピックやパラリンピックとは違う年に違う都市で開催されるのです。
以下は、オリンピック、パラリンピック、デフリンピックに知的障害者だけで行われるスペシャルオリンピックスもあわせた4つの国際大会の流れです。
開催年度 | デフリンピック | オリンピック パラリンピック | スペシャル オリンピックス |
---|---|---|---|
2015年 | 冬季開催 (ハンティマンシースク) | - | 夏季開催 (ロサンゼルス) |
2016年 | - | 夏季開催 (リオデジャネイロ) | - |
2017年 | 夏季開催 (サムスン) | - | 冬季開催 (オーストリア) |
2018年 | - | 冬季開催 (ピョンチャン) | - |
2019年 | 冬季開催 (開催地未定) | - | 夏季開催 (開催地未定) |
2020年 | - | 夏季開催(東京) | - |
全ての大会が4年周期で行われ毎年、オリンピック・パラリンピック・デフリンピック・スペシャルオリンピックスの夏季大会か冬季大会のいずれかの国際大会が行われています。
デフリンピックとパラリンピックが一緒に開催されない理由
国際ろう者スポーツ委員会が国際パラリンピック委員会に加盟していない
パラリンピックに出場するためには、「国際ろう者スポーツ委員会」が「国際パラリンピック委員会」に加盟しなければなりません。
しかし、国際ろう者スポーツ委員会は前身の障害者スポーツのための国際調整委員会から参加していましたが、1995年に国際パラリンピック委員会から脱退したのです。
これには、いくつかの理由があります。
国際ろう者スポーツ委員会はコミュニケーションのために手話通訳を必要としていました。
しかし、毎回の障害者スポーツの会議で手話通訳を行うためには多額の費用がかかっていたのです。
さらに、ろう者としては、聴者がろう者側に歩み寄って通訳を聴者側で行うべきだと考えていました。
国際パラリンピック委員会の前身である、障害者スポーツのための国際調整委員会では新しいメンバーだったので投票権がありませんでした。
さらに、国際調整委員会の委員長に聴覚障害者が選ばれることもなかったのです。
このように、聴覚障害者は国際調整委員会の中では立場が低く、ろう者のことはろう者自身で決めたいという考えもあったことから、国際調整委員会に参加する意義を見失っていました。
こういった大きな理由の他にも、毎回の会議にかかる旅費などの問題も重なったことが国際パラリンピック委員会からの脱退につながったのです。
日本や世界でのデフスポーツの現状
ここでは、デフスポーツは現在日本だけでなく世界でどのような取り組みが行われているのかを説明します。
日本ではろうあ者夏季体育大会が毎年9月に行われています。
2018年には第52回大会が埼玉で開かれ、軟式野球、卓球、バレーボール、陸上、サッカー、テニス、ボウリング、ソフトボール、バドミントン、バスケットボールの10種目が行われる予定です。
また、毎年ではありませんが全国ろうあ者冬季体育大会もあり、2018年2月にはアルペンスキー、アルペンスノーボード、スキーの3種目が行われました。
全国ろうあ者体育大会のほかにも、各デフスポーツ団体が主催する大会が日本各地で行われており、デフスポーツは日本国内で盛んに行われているのです。
海外でも、デフスポーツは盛んに行われていますが、国ごとで行っている取り組みは異なります。
アメリカには、USA Deaf Sports Federationというデフリンピックや国際大会などすべての競技の代表チーム、選手、コーチングスタッフをまとめている機関があります。
しかし、アメリカでは日本のようにデフだけの大会は存在せず、ろう者は大学や高校の大会でも聴者と同じ土俵で試合に出場しているのです。
ヨーロッパの中でも、特にリトアニアやウクライナでは、デフ選手は公務員扱いで活動を行っています。
そのため、スポーツ年金をもらいながら競技に専念することが可能です。
また、リトアニアでは金メダルを獲得すると、生涯毎月1200ユーロが支給されるようになっています。
このように、ヨーロッパでは日本に比べてデフスポーツへの支援が盛んな国もあるのです。
北朝鮮にKorea Economic and Cultural Centre for Deaf and Blind(朝鮮障害者保護連盟)という組織があり、その中のDeaf Association of Korea(朝鮮ろう協会)ではサッカーと水球の活動の中心になっています。
台湾は2009年に台北デフリンピックを開催した際に、台湾でデフリンピックへの知名度が一気に高まりました。
なぜなら、大会期間中は連日、新聞やテレビでデフリンピックのニュースや記事を出し、台湾全体でオリンピックのような盛り上がりを見せたからです。
デフリンピックとは何か
ここでは、デフリンピックという大会について説明していきます。
デフリンピックとはろう者によるろう者のためのオリンピック
デフリンピックは大会の運営もろう者自身が行い、各国のデフリンピック参加者たちは国際手話や各国の手話、英語などを用いてコミュニケーションを取るという特徴があります。
また、デフリンピックの開催種目は最近の夏季大会で21種目、冬季大会は5種目でした。
下記の表は、実際に行われた種目です。
デフリンピックの種目
夏季デフリンピック | 冬季デフリンピック |
陸上 バドミントン バスケットボール ビーチバレー ボウリング サイクリング サッカー ゴルフ ハンドボール 柔道 空手 マウンテンバイク オリエンテーリング 射撃 水泳 卓球 テコンドー テニス バレーボール レスリング(フリースタイル) レスリング(グレコローマン) | カーリング アイスホッケー アルペンスキー クロスカントリースキー スノーボード |
デフリンピックでは、オリンピック種目ではないオリエンテーリングとボウリングが夏季デフリンピックの種目に入っています。
国際オリンピック委員会よりオリンピックと同等の国際大会として「デフリンピック」という呼称を認められたのは、2001年のローマ大会のことです。
しかし、デフリンピックの前身である「国際ろう者スポーツ大会」の第1回夏季大会は1924年にフランスで、第1回冬季大会は1949年にオーストリアで開催されました。
このように、デフリンピックは前身の大会から考えると歴史の長い大会なのです。
デフリンピックにも出場資格がある
デフリンピックの出場資格は、日常生活で使用している補聴器や人工内耳を外した状態での聴力が55デシベルより大きい(55デシベルより大きい音しか聞こえない)ことが基準になっています。
下の表は、聴力と聞こえる音を表した表です。
聞こえる音の大きさ(単位dB) | 聞こえる音の例 |
100dB | 自動車のクラクション |
80dB | 地下鉄の車内 |
70dB | 掃除機の音 |
60dB | チャイム、普通の会話 |
50dB | エアコン室外機の音 |
ここからわかる通り、出場資格の55dBは日常会話が聞き取れるか怪しい程度の聴力を基準としています。
聴力の基準だけでなく、日本では全日本ろうあ連盟の会員となり、出場種目の選考会をクリアすることも必要になってきます。
各種目に関する情報は各デフスポーツ団体のウェブサイトなどでチェックすることがおすすめです。
デフリンピックでは多くの日本人が活躍している
2017年にトルコのサムスンで行われたサムスン夏季デフリンピックでは多くの日本人が活躍し、日本は過去最多の27個ものメダルを獲得しました。
メダルの種類 | 個数 | 獲得種目 |
金メダル | 6個 | 水泳、陸上、バレーボール女子 |
銀メダル | 9個 | 水泳、陸上 |
銅メダル | 12個 | 水泳、陸上、バドミントン、マウンテンバイク、自転車(ロード)、卓球 |
上の表は、メダルの個数と獲得種目を示した表です。
サムスンデフリンピックで日本は、水泳や陸上で多くのメダルを獲得しました。
水泳では藤原選手が金メダル3個を含む9個のメダルを獲得しました。
また、金持選手も7つのメダルを獲得する活躍を見せました。
また、個人種目だけではなく団体戦でも日本は素晴らしい成績を残しています。
例えば、バレーボール女子では予選から決勝まですべての試合をストレート勝ちで金メダルを獲得し、陸上男子4×100mリレーでも金メダルを獲得しているのです。
このように、デフリンピック日本代表選手は素晴らしい成績を残しています。
デフリンピックとオリンピックの違い
競技ルールの違い
普段から補聴器や人工内耳を着用している選手は競技会場では外さなければなりません。
また、競技中だけでなく練習中も着用は認められていないのです。
これは、すべての選手の聞こえ状態を公平にして競技で補聴器や人工内耳が有利に働かないようにするためのルールになります。
デフリンピックで行われる様々な競技では、様々な工夫で合図を選手に伝えることができるようになっています。
陸上競技や水泳では、スタートの合図のために各レーンのスタート位置にスタートランプを配置することが義務付けられています。
写真でもわかるように、スタートランプは各国でデザインが異なることが特徴です。
空手では、審判の声に合わせて競技場の角にあるランプが点灯するほか、競技場を囲んでいる線がオレンジに光って選手に合図を伝えます。
バスケットボールでの審判の合図は、ファールなど時間が止まる時には審判が大きく両手を振ることです。
日本では、コートの対角線上に審判の笛と同時にフラッグを振る人を配置してより選手にわかりやすいように工夫もされています。
過去のデフリンピックではゴールのバックボードが審判の笛に合わせて光るような仕組みもありましたが、日本ではこうした設備はほとんど目にすることは無いです。
一人一人が別々にスタートするスプリント種目と呼ばれる種目では、特殊な方法で合図を行っているのです。
それは、写真のように時計のカウントダウンに合わせて、審判が選手の目の前で指を一本ずつ折り曲げてカウントダウンし、手を振り下ろしてスタートの合図をします。
サッカーでは審判は聴者サッカーと同様に笛を吹きますが、旗を使っての合図も行う工夫がなされているのです。
また、ゴールの横にも笛がなったことを選手がわかるように旗を持った審判員を配置することもあります。
デフリンピックに出場する選手の現状とは?
多くのデフスポーツ選手は仕事と競技の両立が必要
学生以外のほとんどのデフスポーツ選手は仕事と競技を両立しながらデフリンンピックを目指しています。
会社員である彼らは、仕事のために平日の練習に参加できない人もいるのが現状です。
一部の陸上や水泳競技のデフスポーツ選手は、アスリート雇用として企業とプロ契約を結んでいる人や一週間に1日だけの勤務でいい雇用形態のアスリートがいます。
しかし、このように練習に打ち込むことができるデフスポーツ選手はほんの一握りの選手しかいないのです。
デフリンピックに出場する選手の練習環境
全国のデフスポーツ選手は、デフスポーツのチームで日々の練習を行っている人もいれば、聴者のチームに加入している選手もいます。
しかし、指導者やチームメイト、選手自身が手話をできるとは限らず、コミュニケーションを取るのに苦労することも多々あるのです。
筆者自身も、デフバスケットボールチームでサポートを始めた頃はコミュミケーションを取ることに苦労しました。
筆者はろう者ではなく、2010年にデフバスケットボールチームでトレーニングのサポートを始めた時は手話はできませんでした。
2013年までサポートを行っていましたが、手話ができるようになってきたのは2012年になったぐらいです。
最初の2年間は「相手が何を言っているのかわからない」「手話が早すぎて会話に入れない」といった疎外感を感じることもありました。
しかし、トレーニングや怪我のことなど伝えなくてはならないことはたくさんあり、手話ができなくても相手の言っていることを理解する必要があるのです。
そのため、筆者は手話を勉強しながら、手話以外の方法でもコミュニケーションを取ろうとしていました。
筆者は写真のように視覚的なツールを用いたり、質問事項などを先に紙に書き出してそれを相手に見て理解してもらっていたのです。
そして、筆者もだんだん手話ができるようになり、選手との手話による会話が難なく行えるようになりました。
しかし、その時筆者は手話で会話ができることを選手の言いたいことを理解していると勘違いしてしまっていたのです。
この時、筆者は単に手話ができるようになっただけで相手の言いたいことは理解できていませんでした。
手話の裏に秘められた考えを汲み取ることも大切なのです。
デフリンピック選手の苦労
デフリンピックの国内での認知度が日本財団パラリンピック研究会の調査で11.2%であることからもわかるように、デフスポーツの認知度は日本でとても低くなっています。
そのため、デフリンピック選手は会社にデフリンピックに出場することを相談、報告したところ、デフリンピックの存在を信じてもらえないで困ったということも実際にあるです。
このように、デフスポーツの認知度が低いことがデフリンピック選手の大きな課題となっています。
デフリンピック代表選手候補でも、プロスポーツ選手ではないので練習場所は自分で探す必要があるのです。
そのため、以下にあげるような問題に直面するデフスポーツの選手もいます。
・地元にチームがないので、毎回他県へ遠征に行くことになり、費用と時間がかかる
・チームがあっても、人数不足で実践練習ができない
・ハンマー投げなどは、そもそも練習できる環境が少ない
このように、デフスポーツ選手は普通のスポーツ選手に比べて競技を続けて行うことも大変なのです。
一般チームに混ざって練習するデフスポーツ選手は、活動を始める際にそのチームに馴染めるのか不安に感じる選手も少なくはありません。
チームのメンバーに「ろう者」、「聴覚障害」のことを受け入れてもらえるのかどうかが不安なのです。
ろう者や聴覚障害者と言われると耳が聞こえない人とひとくくりにされてしまうことがあります。
しかし、ろう者には単に「耳が聞こえない」とは違う一人一人違う状況があるのです。
実際に、ろう者の中には聴者の学校に通い続け、他のろう者のことをあまり知らずに育ってきた人もいます。
そういった他のろう者との関わりが少なく育ってきた人がろう者のチームに入ると、ろう者が人を呼ぶために大きな音を立てたりする習慣に馴染めない人もいるのです。
「ろう者」「聴覚障害者」と言っても1人ひとり違うということとは、具体的に以下のようなことを指します。
・「話ができる=聞こえている」ではない。
・「話ができる=電話ができる」ではない。
・電話ができる人もいる。
・電話では聞き取れる声と聞き取れない声がある。
・手話で一番コミュニケーションをとりたい。
・手話を使って育ってきていない。手話はできない。
・声を出しているが、自分の声が聞こえないので大きな声を出してしまう。
・補聴器をはめている時の方が集中できる。安心する。
・補聴器をはずしている時の方が集中できる。
ろう者にも一人一人異なる状況に置かれていることを理解して、各人に合わせて会話したり接したりすることが重要です。
デフリンピックを応援、支援するには
デフスポーツに必要な支援とは?
デフスポーツははまだまだ支援を必要としていますが、ここでは特に必要な支援を紹介します。
チームスポーツ、個人種目に関わらずチームメイトや練習相手となってくれる人がデフスポーツには不足しています。
また、技術的なことを指導してくれるコーチや体のケアやトレーニング指導を行うことができるトレーナーも競技レベルのさらなる向上には必要です。
デフリンピックや世界選手権へ選手を派遣する際にかかる費用は自己負担である場合も多く、デフアスリートが活動を行うためには経済的支援も必要です。
デフリンピックへの関心やろう者への理解が応援や支援につながる
デフリンピックを支援、応援する方法は様々あります。
もし、この記事を読んでいるみなさんにもできることがあればやってみてください。
デフリンピックはまだまだ知名度は低いです。
しかし、個人でもSNSなどでデフリンピックのことを発信すれば他の人にデフリンピックを知ってもらうきっかけになると考えます。
まずは、この記事をSNSでシェアすることも一つの方法です。
Tシャツやグッズの販売を行っている競技団体もあります。
こうしたグッズの売り上げが日本代表選手の国際大会派遣費用などにまかなわれているのです。
各競技団体にはそれぞれの活動理念がありますので、ぜひホームページをご覧になってみてください。
一般社団法人日本ろうあ者卓球協会オリジナル 応援Tシャツ
一般社団法人日本ろう者サッカー協会 チャリティTシャツ
一般社団法人日本ろう自転車競技協会 Deaf JAPAN応援プロジェクト
一般社団法人日本ろう者スキー協会 ご寄付金募集
※その他の競技については各デフスポーツ団体へお問い合わせください。国内の各デフスポーツ団体ウェブサイト
筆者は、ろう者のことを理解するには手話を覚えることが重要だと考えます。
なぜなら、手話を覚えると「ろう文化」をより知ることができて、デフスポーツ選手やろう者への理解を深めることにつながるからです。
「ろう文化」とは「日々生活においてろう者だからこそ行う行動」のことです。
具体的には以下のようなものです。
・人を呼ぶ時音を立てたり、相手の体を叩くこと
・手話が見やすいように、向かい合って座る
これらの行動はろう者が日頃から行っていることです。
こういった、ろう者のことをより知ろうとする気持ちや行動がデフリンピックを支援しようという気持ちにつながります。
以下に筆者が行ってきた手話の勉強法を紹介するので参考にしてみてください。
・知り合いの手話通訳士さんに手話を教えてもらう
・図書館の手話の本をかたっぱしから読む
・地元の手話サークルの通う
・テレビ「みんなの手話」を見て学ぶ
・地元のデフスポーツチームに積極的に参加する
・その日習った手話をノートに書く
・手話を使う際もその場で覚えた手話をできるだけ使い、わからない時は正直に聞き返すことを心がける
デフリンピックの見どころは競技レベルの高さだけではない
デフリンピックの見どころの一つはは一般のスポーツ選手にも引けを取らない競技レベルの高さです。
しかし、もう一つデフリンピックにしかない見どころがあります。
それは、試合中での手話による選手や監督との会話並みのコミュニケーションです。
デフ選手同士だけでなく聴者のコーチや監督とデフ選手が、試合中に高速で手話を行うことで意思疎通を図ることもデフリンピックならではの光景になります。
デフリンピックを観戦するには
デフリンピックを現地で観戦するには、旅行会社が企画したデフリンピック応援ツアーを利用するのがおすすめです。
現地に行かずにデフリンピックを観戦することは難しいですが、全日本ろうあ連盟スポーツ委員会のFacebookページでは競技結果の速報を見ることができます。
また、日本選手団公式サイト(リンクはサムスンデフリンピックの際のものです)から日本選手の競技やスケジュール、結果を見ることも可能です。
デフリンピックにS&Cコーチとして帯同していた筆者の普段の活動内容とは
ここでは、デフリンピックへも帯同していた筆者が普段はどういう活動を行っているのかについて紹介します。
現在、筆者はプロバスケットボールチームでストレングス&コンディショニングコーチ(S&Cコーチ)として主に活動しています。
S&Cコーチとは、治療やマッサージではなくトレーニング指導をメインにしたスポーツトレーナーです。
主な仕事内容は、選手へのトレーニング指導のほかに食事やサプリメントのアドバイスなどを行っています。チームの歯車の一つとして監督や他のスタッフと連携しながら、チームへ貢献しています。
現在、デフアスリートへの個人指導は行う他にも、手話を必要としている方へ向けて運動のグループレッスンも時々行っています。
筆者は聴者とろう者の参加者両方に同時に声と手話を用いて指導を行うことが可能です。
デフリンピックの継続には支援が必要
この記事では、みなさんにはあまり馴染みのないかもしれないデフリンピックはどんな大会なのかを詳しく説明してきました。
デフリンピックやデフアスリートを取り巻く環境はあまり良い環境ではなく、みなさんの支援を必要としているのが現状です。
この記事を読んだ読者のみなさんにまずは手話を学ぶなどしてろう者やデフスポーツへの理解を深めて欲しいと思います。