President Blogでじまる館長ブログ
新型コロナで大変な飲食店へのご提案 459名調査に基づくマーケティング戦略
2020年05月08日
先日、小さな飲食店を経営している友人に相談をいただきました。
飲食店はみんなデリバリーやテイクアウトをはじめている。中には予約券やクラウドファンディングまでやっているところがあるけれど、うまくいっているのか。自粛が解除されても客足が戻るとも限らないし、また感染症が広がる可能性もある。人員もお金も限られた小さな店舗が生き残るためには、何に取り組むべきか。
この記事は彼への回答です。飲食店オーナー74人、一般消費者385人、合わせて459人に調査しました。
・飲食店の通常営業だけでは売上が不安、ほかに何をするべきか
・after & withコロナの飲食店で「デリバリー」「テイクアウト」「予約券」「クラウドファンディング」はうまくいくのか
・現在、うまくいっている店舗とそうでない店舗の違いは何か
この情報が参考になりそうでしたら、同じような悩みを持つ飲食店の方に少しでも届くよう、シェアしていただけると嬉しいです。
目次
期間:2020年4月28日〜2020年5月4日 ※緊急事態宣言中
対象:飲食店オーナー:74人、消費者:385人
方法:WEBアンケート調査
調査サンプル詳細はこちらをご確認ください。
※サンプルの偏りがある前提で、傾向を知るための参考にして頂ければ幸いです。
after & withコロナの飲食店の戦略 調査結果まとめ
調査結果をまとめたのが以下です。注目したのが黄色掛けの項目です。
黄色掛けに注目した理由は、コスパの良い具体策につながるからです。詳細は下で解説します。
【結論】after & withコロナの飲食店の生き残り戦略
飲食店の生き残り戦略を図にまとめました。最も注力すべきポイントを赤枠で示しています。
非常に大変な状況ですが、飲食店の需要はなくなりません。大切なのは、サービス・導線・訴求など、たくさんのオプションの中から正しく選択し集中することです。
・テイクアウトサービスが主軸
・Instagramの店舗アカウント運用必須(twitterがサブ、Instagramのアカウント連携で他SNSカバー)
・料理画像、割引情報、おすすめ、こだわり、衛生管理、注文方法、営業時間を毎日投稿
・来店者には、割引特典でInstagram、Twitterをフォローしてもらう
・大切な付加価値:衛生管理、休校の子どもメニュー、ネット注文対応(SNSのDM)、食材&レシピ販売、必死さアピール
・近隣にポスティングチラシで告知
・常連に告知
・googleマイビジネスに登録
ほとんどが感染症の有無に関わらずやるべきことなので、すでに取り組まれていることも多いかと思います。有効な施策の抜けがないかのチェックや、優先順位の確認に使ってください。
調査で感じたのは、人は自粛中も変わらず飲食店のおいしい料理を求めているし、情報を欲しがっていることです。結論に至った詳細を解説していきます。
感染症流行中でも安定して売上をつくれるものは何か
まず、感染症流行中の飲食店サービス利用意向の消費者調査です。
飲食店サービスの利用意向は、1位「テイクアウト」2位「デリバリー」でツートップです。一見すると、この2つは事業成功の可能性があるように思えます。
次に、飲食店調査で感染症中の新しい取り組みのうち「成功したもの」「失敗したもの」を比較します。
まず読み取れるのは、テイクアウトで成功した飲食店が突出して多いことです。一定の失敗もありますが、消費者ニーズと合わせて考えても、うまくやれば成功する可能性が高いのがわかります。この成功法則の分析が、記事のメインです。
一方、デリバリーは、成功も失敗も多い傾向です。フリーアンサーを見ても、配達人員などコストがかさみ収益事業として成功させる難易度が高いのがわかりました。ニーズがあるからと安易にはじめて、リソースを分散してしまうと疲弊してしまう可能性があります。
そのほかの取り組みは、そもそもチャレンジ自体が少ないのですが、注目すべきは「自粛解除後の予約券」の失敗が成功に比べて非常に多いことです。メディアでも取り上げられがちな飲食店応援の取り組みですが、期待しすぎないほうが良いことを意味します。厳しい現実ですが、あくまでうまくいくのは特殊な例として、今目の前にいる消費者にどんな価値を提供できるかに心血を注ぐべきです。
また、新しい取り組みができていない飲食店が30%以上でした。まず、テイクアウトに注力することをおすすめします。
商圏の大きさが テイクアウト < デリバリー < 通販 と広がると同時に競争が激化します。
通販はたくさんの人に食品を届けられそうですが、準備が大変な上に、ノウハウを蓄積した既存のグルメ通販会社とお客さんを取り合うことになるので難易度は上がります。もちろん、遠方のお客さんがたくさん指名でいらっしゃるような店舗は通販で大きく拡大できるかもしれません。
テイクアウトの商圏が狭いことはデメリットのようですが、通常営業の延長で対応できて徒歩圏内のお客さんにとっては立地が代えがたいメリットなので、競合排除できて戦いやすいサービスです。
テイクアウト客をどこから連れてくるか
新しくテイクアウトをはじめた飲食店をお客さんがどうやって知るのか、消費者調査です。
お店のブログ・SNSがお店への導線で圧倒的で、80%弱を占めています。このポイントを抑えることがテイクアウトを成功させる最重要ポイントと言えるでしょう。
これは、テイクアウトで成功した店舗・失敗した店舗で取り組みを比較した調査からもわかります。
さらにブログ、SNSの内訳を細かく見ていきます。
Instagramがダントツで多く、ついでtwitterです。飲食店はIntagramの写真で探す、という消費者行動はテイクアウトでも変わっていません。
これからも情報発信はInstagram、twitterが最重要であることがわかります。実際、テイクアウトに成功した飲食店のフリーアンサーでは「Instagramで集客に成功した」という声は非常に多くありました。
何人かの方からSNSの地域差についてご質問いただきましたので、「都市(政令指定都市がある都道府県)」「地方(都市以外)」で分けてクロス集計しました。
twitterが都市のほうが多いかな、というくらいで他は有意差はなさそうです。このご質問の背景としては、自分の地域のSNSの実態と調査結果に乖離を感じたのではないかと思います。その場合、どちらかに決めてしまわず実感値として重要なものにプラスしてInstagram,twitterを並行運用するなどして、反応をテストしてみてください。
※都市:北海道、宮城、埼玉、千葉、神奈川、東京、新潟、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡、熊本
地方:上記以外の都道府県
一方で、こんな飲食店オーナーの声がありました。
この数ヶ月、デリバリー・テイクアウトに特化したプラットフォームが乱立していて、登録や情報メンテナンスするだけでも大変です。Instagram、Twitterの運営に全力を注ぐのが効率的です。
コスト(お金・手間)と、集客効果のリターンを表した図が以下です。
コストパフォーマンスの良い集客施策が、赤で記したInstagram、Twitter、ポスティング、googleマイビジネス、看板です。特にInstagram、Twitterでフォロワーを増やすことは、顧客名簿を集めることと同義なので最注力ポイントです。
後述しますが、SNSは毎日更新するべきです。そうすると複数のSNSをやりたいけど管理が大変、となるので最重要のInstagramに投稿して、アカウントの連携で他のSNSも同時に更新できる状態にするのが良いと思います。
食べログはテイクアウト情報も記載できて影響力は大きいのですが、効果を出そうとすると固定費がかさんでしまいます。また、食べログに集客を依存してしまとルール変更がリスクなので、食べログに課金しすぎず自分のSNSフォロワーを増やしたほうが、売上が長期で安定すると思います。
また、インターネット広告には「ローカル広告」と言って地域を絞って広告を出すことができるものがあります。見込み客にアプローチできそうですが、調査した限り、ほぼ効果がないのでお金を出してまで検討する必要はありません。広告営業の電話が来るかもしれませんが、断りましょう。
唯一、広告出稿価値があるとしたらSNSはじめたばかりのフォロワーを集める時かと思います。
googleマップやgoogle検索結果に、店舗を表示させることができる無料サービスです。google検索からの流入は一定数見込めるので、登録していなければすぐに登録するべきです。詳細は「googleマイビジネス」をご確認ください。
店舗の導線になるSNSアカウントには2種類あります。「店舗アカウント」と「第三者のまとめアカウント」です。「第三者のまとめアカウント」とは、テイクアウトやデリバリー対応飲食店をまとめて発信しているものです。
「第三者のまとめアカウント」はコントロールできないので、店舗のアカウントをしっかりと運営したら結果としてまとめられるもの、と考えましょう。
Instagram、twitterの運用方法
Instagram、twitterには何を書いて投稿すれば良いのか
消費者調査の集計データと、フリーアンサーを抜粋します。
求められている投稿内容は以下です。
おいしそうな料理写真
メニュー一覧
割引クーポン
おすすめメニュー
衛生管理
営業時間
予約方法
決済方法(キャッシュレス対応可否)
投稿頻度はどれくらいが良いのか
一般的にメルマガやLINEのようにプッシュ通知が届き、かつ広告色が強く頻度の高い配信は、嫌われて登録解除の原因になってしまします。SNS投稿はそこまでの心配はないのですが、念のため調査しました。
投稿は毎日して、毎食の習慣に入り込むべきです。日替わりでおすすめ料理写真をアップして、割引商品をつくるなど工夫すれば来店につながります。
Instagram、twitterのフォロワー登録の増やし方
まずはSNSアカウントの存在を知ってもらう必要があります。
ポイントは、SNSの投稿を「検索しやすくする」、来店してくれた人やチラシなど「接点すべてでSNSフォローへ誘導する」ことです。フォローの動機付けは割引特典があれば機能します。
・SNS投稿に適切なハッシュタグをつける → 「市名・地区名 × テイクアウト・エール飯 × 料理ジャンル」
・Instagram、twitterをフォローしてくれた人は割引する
・来店した人にフォローしてもらう
・ポスティングチラシにアカウントを記載してフォローしてもらう
あとは、料理・接客の質を上げれば口コミやSNSでシェアされ広がります。
一般的にSNSフォロワーを効率よく増やすためには広告を使う場合も多くあります。ただ、テイクアウトサービスへの導線と考えた場合、近隣のターゲット外のフォロワーをお金を掛けて集めても、あまり意味がないのでここでは触れていません。
ポスティングチラシは効率的な見込み客獲得方法、ただし注意点も!
ポスティングチラシは、SNSの次に飲食店誘導に有効であることは前述のグラフのとおりです。フリーアンサーでも多くの意見がありました。
近所の方はリピーターになる可能性が高いので、チラシのポスティングは非常に有効な手段です。チラシの内容は、以下の要素をレイアウトして印刷すれば大丈夫です。
おいしそうな料理写真
メニュー一覧
割引クーポン
おすすめメニュー
衛生管理
営業時間
予約方法
決済方法(キャッシュレス対応可否)
SNSのアカウント情報
また、ポスティングチラシは季節に合わせたメニュー改定告知含めて、3ヶ月に一度は投函したいところです。
他人のポストに勝手にチラシを入れる行為が法的に問題ないか、気になる方もいるかもしれません。通常のポスト投函であれば大きな問題になることは稀かと思いますが、当然ながら受け取った方に不快な思いをさせないことが重要です。
ポスティングお断りのマンションに投函したりした場合には、違法性を問われる可能性があります。以下の弁護士さんの見解を、御一読ください。
ポスティング行為は違法なのか?
差別化しリピーターを確保する付加価値
テイクアウト成功店とそれ以外のリピーター獲得施策の比較です。
SNSの情報発信や割安メニューを前提として、その他に成功の鍵となりうるのが大きく以下の5点でした。
・休校の子供メニューの提供
・ネット注文対応
・食材&レシピ販売
・必死さを伝える
これら対応できれば、差別化できるのでSNSでアピールできると良いと思います。
衛生管理の徹底
自粛中はもちろん、自粛解除後も感染症を警戒する人は間違いなく以前より増えます。アルコール消毒をお客さんが見ているところでしっかり行う、SNSで衛生管理をアピールするなど、知らせて安心してもらうことも重要になります。
休校の子供を意識したメニューの提供
休校やリモートワークで家族用のメニューが求められています。子供メニューや大皿ランチなど、単品だけでなく家族セットを意識すると満足度を上げながら客単価を上げることができそうです。
ネット注文への対応
電話対応のみの飲食店が多いですが、ネット注文への要望は非常に多くありました。ハードルが高いようですが、たとえばInstagramやtwitterのDMから注文を受け付けるなど、工夫している店舗は高評価を受けています。
また、電話注文のみでも番号と住所を紐付けてお店で管理しておくなど、少しの工夫で満足度を上げることができます。
食材&レシピの販売
そのほか、レシピと食材のセット販売には一定の需要があります。
必死さのアピール
誠実な努力があってこそですが、必死であることがわかれば助けたいという声は多くありました。
高くても売れるものはなにか
不景気の不安で、全般で割安メニューが求められています。ただそんな中でも、高価格帯メニューの需要がなくなったわけではなく、「こだわり食材のおいしい料理」&「衛生管理の徹底」は、収益確保として提供する価値があります。
割安メニューを入口として、客単価の引き上げも狙える可能性は十分あります。
テイクアウトの注意点 飲食店営業許可三類について
飲食店経営の免許はその内容に応じて細分化されています。テイクアウト・デリバリーする際には、あらためてどんな資格が必要かチェックしてください。以下、参考記事です。
実は法令違反だらけ…!飲食店「持ち帰り・デリバリー」のヤバい実態
これから暑い季節になるので、食中毒対策にも十分注意してください。
自粛解除後、これまでより重要になるもの
衛生管理、割安感は、しばらくこれまでより重視するお客さんが増えそうです。自粛解除してもすぐにお客さんが元に戻るとは限らないので、売上減分を通常営業の延長で補えるテイクアウト等の取り組みは重要になるでしょう。
大切なのは、変化するお客さんのニーズを捉えて、SNSなど活用して顧客名簿をつくり、適切な価値提供を続けることだろうと思います。
長くなりましたが、冒頭に載せたこの図が結論です。
・テイクアウトサービスが主軸
・Instagramの店舗アカウント運用必須(twitterがサブ、Instagramのアカウント連携で他SNSカバー)
・料理画像、割引情報、おすすめ、こだわり、衛生管理、注文方法、営業時間を毎日投稿
・来店者には、割引特典でInstagram、Twitterをフォローしてもらう
・大切な付加価値:衛生管理、休校の子どもメニュー、ネット注文対応(SNSのDM)、食材&レシピ販売、必死さアピール
・近隣にポスティングチラシで告知
・常連に告知
・googleマイビジネスに登録
ここに書ききれなかった「感染症時代の消費者から飲食店への要望200件」を生データでtwitter経由でお渡しできます。ご希望の方は、twitterもチェック&フォローして、DMくださいませ。
twitter@でじまる館長
最後に〜リアルビジネスに対する思い〜
「これは感染症との戦争だ」
なんて煽っているメディアもありましたが、浪人時代に代ゼミの自習室にこもってたのも自粛生活だったな、くらい呑気なことを僕は考えていました。
先日、緊急事態宣言が延長されました。(追記:2020年5月25日に解除されました)
きっとたくさんの人が思っていたように、僕もなんとなく予想はしていました。これは出口の設定が難しいだろうなと。
けれどいざ現実になると、想像より世界は大変な分岐点にいるんじゃないか、と思うようになりました。コロナの恐ろしさだけではなくて、社会が感染症をどうやって受けとめていくのか、ということも含めて。
Zepp福岡のぎゅうぎゅうのライブも、筑紫野の温泉に入ってコスパ最高のビュッフェを食べる週末も、自宅で待っていて本当に戻ってくるのかな。
日常を取り戻すために自分ができることは何かないか、と悶々としていたところで、ちょうど今回の調査のきっかけになった相談がありました。
僕は普段ネットを中心とした仕事をしていますが、感染症の危機でGAFA(google,apple,facebook,amazon)などIT企業の株価だけが高騰し、店舗を構えているようなリアルな事業が瀕死のダメージを受けていることに強い違和感を覚えます。
あくまで、リアルな世界をIT技術がサポートするから世界は豊かになると思うからです。
この歪みの解消のため、ネット技術で共有できた情報が、飲食店の方が苦難を乗り越える一助になるならとても嬉しいです。
僕も経営者として、行政に要求するべきことはしつつ、けれど期待しすぎず、自分で道を切り拓く覚悟を持つ、ビジネスとは元来そういうものだったはず、と自分に言い聞かせて乗り越えたいと思います。
もし、参考になる点あれば他の飲食店の方にもシェアしてくださいませ。
twitterでは、データ分析やマーケティングのこと、記事に収めきれなかった集計結果、投資のことつぶやいてます。チェック&フォローしていただけると嬉しいです。また、足りない点などもこちらから指摘してくださいませ。
Tweets by digimaru_kancho
《追記》
この調査を基に、外食産業新聞社「FOOD FUN」で編集記事が公開されました。「通常営業+テイクアウト」×SNS=withコロナ時代の飲食店のあり方を示唆!【ホワイトボックス調べ】
みなさんの感想・ご意見をお聞かせください。
プロフィール
江原 聡人(えはら あきと)
1980年 大阪生まれ熊本育ち
高校時代 近所の画家さんに師事して藝大日本画専攻目指すも不合格
1999年 代々木ゼミナール熊本校で浪人
2003年 九州大学工学部機械航空工学科を卒業
2004年 演劇が好きで舞台に立つも大根役者で裏方へ
2004年 ソウル延世大学へ交換留学(2度目の試験でやっと合格)
2006年 九州大学大学院工学府知能機械システム工学を卒業
2006年 上京し博報堂に就職。(制作を期待したが)営業・インタラクティブ職として勤務し、藝大出身の同期に羨望&嫉妬。在職中は、通信・自動車・アルコール・化粧品・食品メーカーなど、ブランディングからダイレクトマーケティングまでを担当。特に、統計予測モデル作成のデータとにらめっこの日々が独立後の礎となる(⇒ホワイトボックス社名に込めた思い)
2014年 退社し東京で株式会社ホワイトボックスを設立
2015年 本社を福岡に移転
2018年 ホワイトボックス図書館館長に就任
モットー:やらない後悔よりやる後悔
語学:TOEIC850点、韓国語(ビジネス)
資格:薬事法管理者、美容薬学検定一級、化粧品検定一級
好きなスポーツ:バレーボール、データサイエンス
趣味:サスペンス映画の序盤でオチを予想すること
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